ピッチングの前足の股関節の働き(がんばれ工藤公康投手)
横浜ベイスターズに移籍した工藤公康投手。現役選手最年長の43歳で、私と同年齢です。今シーズンはなかなか調子が出ず、二軍落ちも経験しています。先日NHKの特集番組で工藤投手のトレーニング方法が放映されていました。それは股関節周りの筋力を鍛えるという主旨でアメリカのトレーニングジムで練習している様子でした。工藤投手の股関節トレーニングのやり方を見ますと「股関節の周りの筋肉に力を入れて、股関節を強烈に回転させるためにトレーニングをする」という風にイメージしているのだと思いました。
ところが「股関節に力を入れて強烈に回転させる」というイメージ(神経指令)に落とし穴があるのです。
結論的に言うと今シーズンの工藤投手は股関節を強烈に回転させるというイメージが強すぎるため、前足への体重移動が不十分になっています。そのことによって体重が軸足側に残り、腕の振りの遠心力をうまく利用できず腕を振ろうとすればするほど腕が振れなくなっているのです。(写真1)
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問題は前足の股関節の間違った筋出力の神経指令の方法にあります。
股関節は骨盤に接続していますが球状関節という自由に動く構造になっています。また上半身の体重をすべて支える頑丈な構造でもあります。股関節は自由自在に動けてなおかつ固定的で頑丈であるという二つの矛盾する性質を持つ関節なのです。地震の揺れを逃がす高層ビルの免震構造をイメージしてもらうといいと思います。
通常、股関節は立っている状態では上半身の重さがかかっています。その重さを支えるために股関節の周りの筋肉は股関節を固定的にロックするように働きます。立っている状態から動くためには股関節周りの筋肉のロックを解除してから股関節周りの筋肉に力を入れなければなりません。
この股関節の周りのロックを解除してから力を入れることが少し難しいのです。
工藤投手の場合、前足が接地した時点で股関節を回す(力を入れる)イメージが強すぎるために股関節がロックしてしまいます。軸足から体重移動したエネルギーが充分に前足に体重移動しないうちから腕を振ろうとして体重が軸足に残ってしまうのです。(写真2)
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工藤投手の行う股関節トレーニングのイメージが間違っていてその影響が出ているのでしょう。ピッチングの時に前足の股関節を充分に働かせるためには「軸足からの体重移動のエネルギーを前足の股関節で吸収する」とイメージするとよいと思います。(写真3)
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このイメージで行うと股関節は体重を吸収しようとして曲がります。そしてそのエネルギーを回転エネルギーに変換するように(外旋)動きます。このイメージを持ってすべての股関節トレーニングに取り組まないと工藤投手のようなことが起きてしまいます。
当研究所の「ケトルベルで160kmをめざす投球体をつくる」の中の四股型ウォーキングなどは本来の股関節の動きを身につけ、その周りの筋力を鍛える大変効果の高いトレーニングです。
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