「立つこと」と「動くこと」抗重力筋の作用(ピッチング編)
色々なスポーツや武道などは立った状態で動きます。当たり前と思える人間が立った状態で動くことは最先端の科学が大変高度な運動であることを証明しています。ロボット工学の分野で二足歩行のロボットができたのはつい最近のことです。二足歩行のロボットは絶妙なバランスをとりながら動いているのです。人間といえば立った状態でスポーツや武道をするのですから最先端のロボットやスーパーコンピュータにもできない、限りなく高度な運動なわけです。まず人間が立っている状態を見てみると背骨のS字構造や骨盤と股関節のアーチ構造など、太鼓橋のような大変強い力学的構造になっていることがわかります。(図1)
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そしてこれらの骨格の構造を支えているのが筋肉です。骨という支柱を筋肉というつっかえ棒が支えている構造になっています。特に抗重力筋といわれる筋肉群(ふくらはぎ、太腿前側、腹筋、お尻の筋肉、脊柱起立筋など)が大変重要な役割をしています。(写真1)
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体の前側の筋肉と後側の筋肉が力を出し合って人間が立っている状態の骨を支えているのです。ですから立っている状態は筋肉に力が入っているということになります。だから寝る時は横になって休むのです。動くということはどういう事かというと関節を曲げ伸ばしをすることです。そこにちょっと関節の回旋を加えることによって歩いたり走ったり、スポーツをしています。関節の曲げ伸ばし、回旋は、筋肉に力を入れる力を抜くの作用によるものです。
先ほどの立っている状態を思い出してほしいのですが、立っているとは抗重力筋に力が入っている状態ですよね。ですから、上手く動く為には抗重量筋の力を上手く抜くことが必要になってくることがわかります。色々な技術書や解説書を見ますと「脇を締める」「腕を強く振れ」など、力を入れることを解説しているケースがほとんどです。今まで読んで頂ければわかる通り、立っている状態そのものが筋肉に力が入っている状態ですから、大きな筋力を発揮する為には力を抜くというプロセスをしてから力を入れなければなりません。
一流アスリート達は力を入れる達人ではなくて、力の抜き方が上手い達人と言えると思います。大きな力を発揮する直前にはその筋肉から力が抜けていなければならないのです。上手くならない選手は力を抜くタイミングを間違えているということが言えるのです。プロ野球中継などを観戦する時は、この力を抜くタイミングに目を凝らしてください。感じるように観て下さい。その選手のフィーリングをつかむのです。
今回は私がピッチングにおいて一番大切だと思っている力を抜く瞬間をお伝えしたいと思います。それは、ピッチャーが前足をステップして大きく開き、ボールをリリースする直前です。(写真2)
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このタイミングの良し悪しが球持ちの良いリリースに繋がり、バッターがタイミングをとりづらいボールになります。どんなに速いボールを投げられてもバッティングセンターのアーム式のマシーンのように同じテンポでボールがくれば、目が慣れれば打ててしまいます。ところが、リリース直前の力を抜くことができると、いわゆる間があるボールを投げることができます。ソフトバンクの和田投手、斉藤投手、中日ドラゴンズの岩瀬投手、阪神タイガースの藤川投手など、良いピッチャーはみんなできています。
ベイスターズのクルーン投手と藤川投手の違いは、このリリース直前の「間」の時間の差と言えます。具体的な方法を解明すると、リリース直前に体の中心(恥骨、背骨、仙腸関節など)から力を抜くことです。(写真3)
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多くの一流ピッチャーが「リリースの瞬間にだけ力を入れる」と話していることはこの事を言っています。体の中心部の開閉運動が起こることにより、腕や脚などに大きな力(遠心力)が発生することになるのです。(写真4)
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では、練習方法をお伝えします。大きく脚を拡げて中心ラインの力を抜いてボールを投げます。この時、体の中心ラインが垂直に沈むようにし、両脚の股関節の外旋が起こり、リリースが起こるようにします。(写真5)
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何回も何回も練習して感覚をつかんで下さい。ある程度できるようになったら脚を上げた実際のフォームと組み合わせて練習して下さい。また、この中心ラインの力を抜く作用を実感する為には、このラインのストレッチをはじめ、全身の関節筋肉の柔軟性が必要です。「インナーマッスルストレッチ&体幹体操」をお勧めします。球持ちのよい、バッターの打ちづらいボールを投げることを目指して練習に励んで下さい。
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