背骨のインナーマッスル 回旋筋と多裂筋の働き(ピッチング編)
人間の体は骨格と筋肉と内臓で出来ています。骨格の骨組みがあって、その周りを何層にも重なり合った筋肉が骨組みを支えるようにして人間は立つ事ができます。骨に直接付着している筋肉をインナーマッスルといい、その上に重なっている筋肉をアウターマッスルといいます。インナーマッスルは全身にあるのですが、今回は背骨に付着している回旋筋や多裂筋に注目してみようと思います。
背中側のこれらの筋肉は脊椎起立筋とともに抗重力筋と呼ばれ人間が立つ動作において大変重要な働きをしています。脊椎起立筋は体の前側の腹筋などと連動して前側と後ろ側でバランスをとるように働いて人間は立つ事ができているのです。人間は立つだけでなく前後左右に動いたり回転したりなどいろいろな動きをします。例えば背伸びの運動を詳しく説明してみようと思います。この背骨のインナーマッスルである回旋筋や多裂筋は背中側の筋肉と共に収縮して腕が上にあがる背伸びの運動の時に働きます。(写真1)
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その反対に体が縮む運動は前側の腹筋が働いて体が曲がります。(写真2)
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このように前後で逆の働きをする筋肉を主動筋と拮抗筋の関係といいます。片方の筋肉が働いている時はもう片方はリラックスしてゆるんでいなければなりません。両方の筋肉が同時に働いてしまうことによりその運動そのものにブレーキをかけてしまうように働いてしまうのです。具体的には腹筋運動などの時に背中側(腰周辺)の筋肉が同時に働いてしまう(力が入る)ことによって腹筋運動にブレーキをかけてしまうことになります。(写真3)
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よく腹筋運動で腰を痛めてしまったなどという話を聞きますが、このような使い方が原因なのです。体の運動には前後の運動だけでなく回旋する運動もあります。例えば野球のバッティング、ピッチング、テニスのストローク、ゴルフのスイングなどが体を回旋させる動きです。このような回旋の動きの時に体の中心部の背骨に付着する回旋筋や多裂筋が大変重要な働きをします。ここで体を独楽に例えて回旋のときの力の使い方説明しましょう。独楽を回す時に、軸をつまんで回すと簡単に回りますがふちをもって回すと大変です。(写真4)
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より中心に近い部分に力を加えることによって効率のよい回旋が生まれます。胴体を独楽のようにイメージしてもらうと、より中心に近い部位は背骨ですからそこに力が加わる事により、効率のよい回旋運動が起こるのです。この技術を古武術では「割体」又は「背中を割る」「胸を割る」「腰を割る」「腹を割る」などといいます。
では、この技術をピッチングの動きの中で分析してみようと思います。体幹部の筋肉の構造に注目してください。回旋筋や多裂筋など背中側の筋肉、前側の腹直筋、腹斜筋、胸の筋肉の大胸筋など、人間の体は左右対称の筋肉がついています。結論をいうと「割る技術」などの使い方は左右の筋肉が時間差で働くことにより(ズレて働く)体幹部の中心で回旋運動が起こります。背骨周辺で回旋運動が起こり、そして表面のアウターマッスルなど大きな筋肉が次々と働きだすことなのです。(写真5)
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ピッチング(右ピッチャーの場合)足を上げたときに右側の腹筋、腹斜筋が働きます。次にボールを後方に持っていった時に右側の回旋筋、多裂筋が働きます。次に左側の回旋筋、多裂筋が時間差で働きます。(写真6)
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この左右の回旋筋、多裂筋が働く時間差によって背骨周辺に回旋運動が起こります。この技術が「背中を割る」ということになります。このときボールを持った腕(右側)の大胸筋はゴムが伸びるように引っ張られています。胸がはれている状態です。更に筋肉の働きは左側の腹筋、腹斜筋に移り右の大胸筋が強烈に力を発揮するのです。(写真7)
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このように体幹部をぐるりと一周するように順番に筋肉が働く事によって回旋効率のよい運動が生まれるのです。いまのスポーツ科学では、この中心部の運動は解明されていません。ところが古の先達はこの事実に気づき術理として残してきたのです。一流アスリート達は当たり前のように、この「割る」フィーリングで動いています。2005年日本一になったロッテのエース清水投手などは、この「背中の割れ」の達人なので参考にして下さい。割れる術理のピッチングが出来るためには背骨周辺の柔軟性が開発されていなければなりません。そのためには「インナーマッスル・ストレッチ」「ストレッチポール」「ケトルベル・インナーマッスル・トレーニング」(特にケトルベルタワー)(写真8)
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などで背骨と肋骨の結合部(回旋筋、多裂筋)胸骨と肋骨の結合部、恥骨結合(図)
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(図1-クリックで見る事ができます。) |
などを動くようにストレッチしていなければならないのです。
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