自然身体構造研究所 編

第70号:

古伝空手の型に学ぶ肩のインナーマッスルの作用

先日沖縄古伝の空手の師範である宇城憲治氏の「誰でもたちまち130キロが打てる武術打法」という本が出版されました。今回は、この本を参考に、肩のインナーマッスルについて紐解き、具体的な練習方法を紹介して行きます。



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古伝空手の型に学ぶ肩のインナーマッスルの作用

バットを握る、ボールをつかむ、ラケットをつかむ、竹刀を握るなど道具をつかむことによって人間はいろいろなスポーツや武道、文化をつくりあげてきました。先日沖縄古伝の空手の師範である宇城憲治氏の「誰でもたちまち130キロが打てる武術打法」という本が出版されました。宇城氏は古伝の空手の教えをいろいろなスポーツの指導に応用し宇城氏が指導した高校が甲子園大会で活躍していたりします。

この本の中で宇城氏は三戦(サンチン)という空手の型(写真1)

写真1 (写真1-クリックで見る事ができます。)

の動きをバットの握り方へ応用する方法を解説しています。武術的な握りということで力強い動きができるということなのです。(写真2)

写真2 (写真2-クリックで見る事ができます。)

自然体の構え、握りということでしょうか。ではなぜこの力強い握りができるのか、みなさんに体験してもらおうと思います。二人組みになってもらって、AさんとBさんを決めます。Aさんは人差し指を一本突き出します。Bさんはその人差し指を手で握ります。そしてAさんは握られた人差し指をBさんの手から抜こうとしてください。無理やり抜こうとはしないでAさんは人差し指の抜けやすさ、Bさんは自分の握った感じをよく覚えてください。(写真3)

写真3 (写真3-クリックで見る事ができます。)

次に、設定は同じで今度はBさんが空手の三戦の動きをしながらAさんのひとさし指をにぎります。Bさんはリラックスして肩幅に足を開いて立ちます。腕もリラックスさせておき肘を脇につけ腕を外側にひねる様にします。(写真4)

写真4 (写真4-クリックで見る事ができます。)

このときに肩甲骨の動きによって腕が外側にひねられるようにします。(写真5)

写真5 (写真5-クリックで見る事ができます。)

この腕がひねられる働きは肩甲骨のインナーマッスルの働きです。その状態から今度は反対に腕が内側にひねられるようにします。このときも肩甲骨のインナーマッスルの働きによって動いていることを認識します。背中側からの動き(肩甲骨の動き)で腕が回旋してその動きの流れを使いながらBさんはAさんの人差し指をリラックスしながらしっかりにぎります。その時に小指、薬指を利かせるようにしっかりにぎります。(写真6)

写真6 (写真6-クリックで見る事ができます。)

どうでしょうか。最初に力づくでにぎった時と、空手の三戦の肩甲骨の動きを利用した握りでは明らかに三戦のほうが強く握れます。これは使っている筋肉の量が違うからです。力づくで握っている時は手のひらの筋肉や手首周辺の筋肉しか握るという運動に使っていないのです。ところが三戦の動きの場合、握る運動に背中側の筋肉、上腕部の筋肉、前腕部の筋肉、手のひらの筋肉、腕全体の筋肉が総動員されています。当然筋出力が違います。私は、これをインナーマッスルの連動ネットワークと呼んでいます。全身のインナーマッスルが連動して動くことにより全身のアウターマッスルをも連動させ全身を使い切った動きができるのです。

面白い事に、この三戦の腕のひねりを応用したにぎりの場合、あまり力を入れた感覚がありません。しっかり握っているのですが力んだ感じが無いのです。人間は例えば握る掴むなど特定の場所を使う場合、一部だけに力を入れて動くくせがあります。これが力みであり筋肉の一部の力しか使わず筋肉の連動ネットワークを使えなくなる使い方なのです。

古伝の空手、古武術などの型稽古は筋肉の連動ネットワークを構築する動き方を修得させるねらいがあったのです。だから、型稽古を力づくでやってしまうと意味がないことになってしまうのです。ポイントはインナーマッスルの動きに注目しリラックスしながら動くということなのです。インナーマッスルが動き出せばアウターマッスルは、インナーマッスルの動きに乗り全面的に動けるのです。これが「リラックスしながら動く」という一流アスリート達の発言にあらわれているのです。

具体的にインナーマッスルの連動ネットワークを使ったバットの握り方を説明します。まず先ほどの三戦の型をとります。(写真7)

写真7 (写真7-クリックで見る事ができます。)

このときに腕が外側にひねられていますが肩甲骨のインナーマッスルや前腕部のインナーマッスルが働いています。腕が外側にひねられる時に(同時に腕は縮まる)は肩甲骨は背骨に近づくように動き前腕部の手の甲側の筋肉が働きます。(写真8)

写真8 (写真8-クリックで見る事ができます。)

腕が内側にひねられるとき(同時に腕は伸びる)には肩甲骨は外側へ動き、前腕部は手のひら側の筋肉が働きます。(写真9)

写真9 (写真9-クリックで見る事ができます。)

これらのポイントを認識して動きます。要するに物を握る時は腕のインナーマッスルの働きである腕の回旋を利用しながら動くと筋出力が高いのです。これらの動きのなかで気をつけるポイントは肩の筋肉(三角筋や僧帽筋)による小手先の動きではなく肩甲骨からの動きで行うことです。(写真10)

写真10

(写真10-クリックで見る事ができます。)

肩の筋肉の動きで腕を動かすと肩があがってしまいます。いかり肩、力んだ腕の使い方です。三角筋や僧帽筋はなるべく使わないようにします。肩甲骨のインナーマッスルが上腕骨を回旋させ前腕部の尺骨を軸とした回旋を行うと手が独特な形になります。(写真11)

写真11

(写真11-クリックで見る事ができます。)

居合や剣道などの剣の握り方の教えに「うずらの卵を握るように柔らかく握る」というのがあります。インナーマッスル群による腕の回旋が、物をつかむ動きに連動すると小指、薬指と順番に指が握られるようになります。結果として小指、薬指がしっかりしまり他の指や手のひらでうずらの卵をつつむような手の型になるのです。このような動きを身につける為には肩甲骨をはじめ、腕全体のひねりによる柔軟性、腕の各関節の柔軟性が必要です。尺骨軸回旋トレーニングは、このような腕本来の動きを身につける為に開発しました。継続してトレーニングすることにより自然で力強い動きが身に付きます。

 


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(例:体の使い方について/トレーニンググッズについて)
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