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背筋の使い方(野球達人トレーニング ピッチング編)
先日、ヤクルトスワローズの館山昌平投手と話す機会がありました。館山投手は日大出身で右サイドスローぎみの本格派投手です。入団一年目は、すばらしいピッチングをしたものの、打線の援護にめぐまれず、一軍での勝星はあまりあげられませんでした。二年目には故障をしてしまい、復帰に向けてリハビリを続け順調に回復しているそうです。
そのリハビリの一環としてフリーウェイトのウェイトトレーニングに取り組んでいるそうです。専門トレーナーの指導のもと、メニューを組んで、シーズン中もオフの間も年間を通じてトレーニングするそうです。だんだん日本も大リーグ式のスタイルに移行しているようですね。
この大リーグの考え方は、鍛え上げるというよりも年間を通じて筋力を落とさず高いパフォーマンスを維持させようというものです。リハビリ的ですね。たしかに筋肉は動かさないでいるとおとろえてしまいます。骨折などでギブスをして数ヶ月固定した状態でいると筋肉がたいへん弱くなってしまいます。
ところで、この話の時に面白い話を聞きました。速球派投手はみな筋力測定の数値が高いというものでした。特に背筋力の数値が高いということでした。バッターでも飛距離の秘訣は「背筋力だ」と言われています。背筋力の測定器は、下の方にあるバーを上に引き上げる、そこに筋力計がついていて、計測ができるという仕組みになっています。みなさんも学生時代に経験があると思います。
ところが、館山昌平投手は背筋力を含めて筋力測定の数値が平均点だそうです。ですが彼は140km後半のスピードボールを投げます。彼は背筋が平均並なのになぜスピードボールが投げられるんだとまわりの人に言われるそうです。要は全身を運動させる能力が高いということになるのですが…。
このことは、背筋力が300kg以上のプロレスラーが140kmのスピードボールを投げられないことでもあきらかです。ですから、背筋力だけを鍛えればよいということは間違いであることがわかります。
背筋の機能について説明してみようと思います。ちょっと実験をしてほしいのですが、腕を上に上げて背伸びをして下さい。この運動を解説しますと背中の筋肉が伸びるのではなくて、縮むことによって背伸びしているのです(写真1)。
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「背伸び」という言葉のイメージだけであると、言葉通りに受けとって背中が伸びてしまっているというイメージをもって運動してしまっていることがあります(写真2)。
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背中の筋肉を伸ばすようにすると本来出すべき出力と違った筋肉の出力の指令を脳がおこなっていることになるのです。身体の中に矛盾がおこっています。
正確な背伸びの運動のイメージ(脳の指令)は、背中側の筋肉が縮むことによって背筋が真直ぐになって背が伸びるというものです。この時、身体の前側の筋肉(腹筋)などはリラックスしていないと背中の筋肉の縮もうとする動きを邪魔することになる。
すなわち、おおざっぱに言って身体前側の筋力を使う時は後側はリラックスしていなければならず、後側の筋力を使う時は前側はリラックスしていなければなりません。前側の筋肉と後側の筋肉は解剖学的な言葉で言うと拮抗筋であるということになります。全身にある拮抗筋のバランスをじょうずに使うことがうまい選手の動き方なのです。
ですから、速球派投手は背筋力が強いから、球速を上げるには重いウェイトでガンガンやって背筋力をつけようなどの発想はナンセンスです。
筋肉の性質として、筋肉は自らは縮むことしかできないということあります。イメージとしては、自分で縮むことのできるゴム製品というイメージです。このイメージを使ってピッチングの動作を見てみましょう。テイクバックから腕の振り上げの時には背中側の筋肉は縮んでいます(背伸びしている)。この時、前側の筋肉(大胸筋や腹筋)がリラックスしていれば、背中が縮んでいるので前側は胸が張り、筋肉はゴムが伸ばされるように伸びています。(写真3)
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トップからリリースに関しては、前側の筋肉はゴムが伸びた状態になっているので、元の長さに戻ろうとする力とさらに自ら縮もうとする力で(伸張性反射)スムースなリリースが生まれます。この時の注意点は前側の筋肉は縮もうとしているのを邪魔しないように、背中側の筋肉はリラックスしていなければなりません(写真4)。
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あとは惰性でフォロースルーになります。(写真5)
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このように前側の筋肉と後側の筋肉を交互に使いわける投手が速いボールを投げられるわけです。
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